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社内資料と公開資料が食い違うときの扱い

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社内資料と公開資料の内容が違っても、直ちにどちらかを誤りと決めることはできません。公開資料が制度上の利用条件を説明し、社内資料が従業員に認める利用範囲を定めているなら、両方が成り立つことがあります。まず同じ行為について答えているかを確かめ、制度の説明、組織の制約、個別案件の判断を分けて整理します。

この区別がないままAIに「正しい方を採用して」と頼むと、厳しい社内制限が法律上の義務として書かれたり、公開資料の「利用可能」が社内の利用許可に置き換わったりします。いま答えたい問いごとに、使える記述と保留する記述を選びます。

目次

何について食い違っているかを一文にする

比較を始める前に、「当社の営業部が、今月、顧客向け申請をオンラインで提出してよいか」のように、行為者、対象業務、実施時点を固定します。「オンライン申請は可能か」だけでは、制度として可能なのか、当社で許可されているのかが曖昧です。

資料ごとに、誰に向けて、どの行為について、どの条件を示しているかを書き出します。公開という属性だけでは法的効力は決まりません。行政機関の解説、法令本文、事業者の利用案内、個人の解説では、同じ言葉があっても役割が違います。社内でも、承認済み規程、部門の暫定メモ、研修資料、担当者の口頭説明を一つにまとめないようにします。

NISTの任意の管理枠組みAI RMF 1.0では、法令・規制への対応、組織の方針、役割と責任を扱っています。これらを分けて記録する考え方は参考になりますが、特定の社内規程が適法であることを証明する資料ではありません。以下は、この区別を資料照合に使うための実務上の整理です。

原資料から射程と適用日を拾う

射程とは、その記述が何について、どこまで言っているかです。比較表には全文を複製するより、判断に関わる箇所とその前後の条件を残します。

確認する点 公開資料で探すもの 社内資料で探すもの
対象 制度名、対象者、地域、対象手続 会社・部門・職種、対象業務
根拠と役割 法令本文か、解説か、運営者の案内か 規程か、正式な運用通知か、参考メモか
時点 対象版、施行・適用開始、経過措置 承認日、適用開始、終了条件、改訂履歴
条件と例外 利用資格、除外対象、別資料への参照 利用可能者、承認手順、例外承認者
確認先 所管窓口、法務など必要な専門担当 規程管理者、業務責任者、承認権限者

更新日が新しい方を自動採用することも避けます。文書を修正した日と、その規則が適用される期間は別です。DCMI Metadata Termsも、発行、変更、有効な日・期間を別の属性として定義しています。資料を照合するときも、ページの更新日だけで旧契約や過去の手続への適用を判断せず、有効期間を別に確かめます。ただし、日付の分類自体が規程の効力を決めるわけではありません。

原資料が手元にないときは、「研修スライドにこう書かれている」と「現行規程がこう定める」を区別します。要約や転載の内容は確認できても、対象版や例外を確認できなければ、その条件については判断を保留します。

公開制度と社内制限を同じ案件で比べる

ここからは架空例です。制度Rの公開説明第3項には、「2026年10月1日以降、登録済み事業者は対象手続をオンラインで提出できる」と記載されています。A社の承認済み利用規程第5条には、「オンライン提出は管理部の指定担当者のみが行い、営業部は提出資料の作成までを行う」とあります。いずれも10月9日時点の対象版として提供されたものとします。

営業部の担当者は、AIに「公開説明では利用できるのに、社内では禁止とある。営業部が提出してよいか」と質問しました。ここで公開説明が答えるのは、登録済み事業者が制度上利用できる手段です。社内規程は、その手段をA社の誰が使うかを定めています。営業部の実行権限を公開説明から導くことはできません。

判断したい事項 読み取れる内容 まだ確かめる内容
オンラインという手段があるか 公開説明は条件付きで利用できると記載 A社と今回の手続が条件を満たすか
営業部が提出する担当か 社内規程では作成まで。提出は管理部指定担当者 別の有効な例外承認があるか
営業部による提出は法律で禁止されているか 提供された二資料だけでは、その結論を支えない 該当法令と行為への適用を専門担当に確認
作業をどこまで進められるか 社内規程の範囲で提出資料を作成できる 内容確認と提出の承認が誰に必要か

期待する回答は、「公開説明と社内規程は対象としている許可の範囲が違います。社内規程の記載に従えば、営業部は作成までで、提出は管理部指定担当者が行います。A社の制度利用条件と例外承認の有無は別途確認してください」です。「法律により営業部は提出できない」とは書きません。

また、社内規程に従うという整理は、規程そのものの法的妥当性を検証したという意味でもありません。社内規程と法令の実際の衝突が疑われる場合は、厳しい方を選ぶだけで片付けず、法務担当者などへ確認を回します。

条件を一つ変えると判断も変わる

同じA社で、管理部長による例外承認書が追加されたとします。承認書が営業部の特定担当者、今回の手続、対象期間を明記していても、AIは肩書きだけで有効な承認と決められません。規程がその管理部長に例外承認権限を与えているか、承認書の真正性と有効期間、実際の担当者が対象者かを確認します。

有効な例外と確認できれば、「原則は管理部が提出するが、今回の担当者は確認した承認範囲で例外の対象」と整理できます。これは社内制約の適用が変わったのであり、法律上の一般的な許可範囲が変わったという説明にはしません。

一方、公開説明が単なる更新でなく、今回の手続を対象から除外した正式案内だった場合は、社内規程に許可が残っていても、そのまま提出可能と答えられません。対象除外の根拠と適用日を確認し、業務責任者と制度担当へつなぎます。違いが対象の違いなのか、旧情報なのか、同じ条件についての未解決な矛盾なのかを分ける必要があります。

確認責任者には判断材料をまとめて渡す

照会先は、資料の作成者と同じとは限りません。文面の意味は規程管理者が説明できても、例外承認は別の責任者が担当することがあります。法的な適用の疑問、社内の実行権限、資料の改訂漏れを一件の質問に混ぜず、判断権限ごとに分けます。

A社の照会メモなら、対象業務と実施予定日、公開説明の第3項、社内規程第5条、両者の版と適用日、営業部が行おうとする操作を記します。そのうえで「社内の実行権限を確認したい」「制度の利用条件を満たすか確認したい」と質問を明示します。判断者、回答日、回答の対象範囲も残せば、別の案件で例外回答を一般ルールとして流用しにくくなります。

回答を待つ間は、未確認の権限に依存する提出を保留し、認められた資料作成など独立した作業を進めます。期限がある場合は、保留中であることと期限への影響を責任者へ伝えます。急いでいることを、制限を外す根拠にはしません。

照合記録を増やし過ぎると、日常業務では維持が負担になります。対象版と適用範囲が同じ確認は再利用し、規程の改訂、対象部門の変更、例外承認の期限切れなど、判断を変える出来事があった箇所を再確認します。記録があるだけで有効とせず、今回の条件に対応しているかを見ます。

社内向け回答を社外へ転用するときには、根拠として使った社内規程の開示可否も別に確認します。公開資料との比較に必要だったことは、社内資料を外部サービスへ入力したり、社外に添付したりする許可にはなりません。社外向けには開示できる根拠で結論を説明し、必要な内部確認は権限のある担当者の間で行います。

食い違う資料から結論を出す基本は、「食い違う複数の資料から結論を出すための統合と裁定の基本」で解説しています。

出典・参考資料

  1. NIST「Artificial Intelligence Risk Management Framework(AI RMF 1.0)」(確認日:2026年10月12日)
  2. Dublin Core Metadata Initiative「DCMI Metadata Terms」(確認日:2026年10月12日)
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この記事を書いた人

さかっぺのアバター さかっぺ PAP Research運営 / AIガバナンス・アーキテクト / プロンプトデザイナー

ITインフラの実務経験をもとに、AIの安全性と実用性を両立する仕組みを研究。PAP Researchでは、AIモデルの継続観測と、プロンプト・AI技術の実務解説を発信しています。

経歴や研究方法、発信方針は運営者プロフィールで紹介しています。

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