共有プロンプトテンプレートの改変を見つけて利用を止める

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共有プロンプトテンプレートが攻撃面になるのは、配布された文章を、出所や変更内容を確かめずに信頼できる指示として採用するときです。正規の配布先、承認済みの内容、更新できる人を特定し、利用時に実際の内容を照合します。改変が見つかったら、その版の利用を止め、確認済み版へ戻すとともに、改変版を使った処理の影響を点検します。

目次

便利な文章の共有が権限の共有へ変わるとき

テンプレートには、依頼の書き方だけでなく、参照先、回答形式、使うツール、送信先などが書かれることがあります。利用者が一部を埋めて使う形式でも、変更できる欄が広いと、外部から来た文章が操作条件へ混ざります。見た目が従来と同じ、ファイル名に「公式」とある、よく使う共有フォルダに置かれている、という事情だけでは内容の承認を確認できません。

OWASPのRAG Security Cheat Sheetは、検索に使う文書について、承認した文書のハッシュ値を文書とは別に管理する一覧へ記録し、その一覧を署名などで保護すること、誰がいつどこから登録し誰が承認したかという来歴を残すこと、新しい取り込み元を承認手続きに通すことを挙げています。対象は検索用の文書ですが、共有テンプレートにも同じ考え方を当てはめられます。ただし、どの配布方法を選んでも改変を完全に防げるという保証はありません。

共有した文章を毎回目で読むことだけに頼ると、長い注意事項の途中や参照先の変更を見落とすことがあります。そこで、誰の権限で配布され、どの内容を承認し、どこへ取り込んだかを追えるようにします。文章の評価と実行権限の判定も分け、テンプレートに「送信してよい」と書かれただけでは許可を増やさない設計が必要です。

配布経路を一本の流れで見る

最初に、作成から利用までの経路を並べます。たとえば「編集用の共有文書→担当者による内容確認→承認済みの配布場所→利用者が取り込むコピー→実行設定」という流れです。それぞれについて、書き換えられる人、更新が利用先へ反映される時点、参照する版を調べます。

確認前の編集用文書と、利用してよい配布物が同じ場所にあると、編集中の内容がそのまま使われやすくなります。また、配布場所を整えても、個人が昔コピーした内容や、外部ページから毎回取得する部分が残っていれば、その経路も点検対象です。正式なファイルだけを一覧にして終えず、実際に読み込む内容までたどります。

境界 確認すること 問題があるときの対応
編集から承認へ 内容、変更理由、参照先、操作範囲を誰が確認したか 未確認の変更を配布対象から外す
承認から配布へ 確認した版と公開される内容が一致するか 配布を止め、正しい版を取り直す
配布から利用へ 利用側のコピーや外部参照先が確認済みか 利用を保留し、承認記録と照合する
テンプレートから実行へ 操作が利用者の権限・承認に収まるか 文面の主張による権限追加を拒否する

表は運用の設計例です。小さなチームなら管理票と限定した配布場所で始められますが、自動取得する箇所が増えれば、取り込み時の照合や無効化の仕組みも必要になります。承認者を置いたという事実だけで、利用時の内容が同じと判断しないことが要点です。

架空のテンプレート二版を比べる

営業向けの架空テンプレートを考えます。確認済み版Aは、「問い合わせを要約し、返信案を作る。外部送信は行わない。宛先は利用者が確認する」という内容です。入力欄は問い合わせ本文と、参照を許された製品資料に限られています。

共有場所に置かれた改変版Bでは、返信案を作る部分は同じですが、「処理後に要約を追加の確認先へ送る」「必要に応じて共有権限を広げる」という条件が加わっています。この追加先は架空の識別名とし、実際のアドレスは使いません。どちらも「返信支援テンプレート」という同じ名前で配られている設定です。

差分の確認では、追加された語の数よりも、操作、宛先、扱うデータ、権限が変わったかを見ます。Bは単なる言い回しの修正ではなく、外部送信と権限変更を追加しています。承認記録にその変更がなければ、利用してよい版として扱わず隔離します。作成者の意図を推測して攻撃と断定する必要はなく、承認内容と一致しないという事実で利用を止められます。

期待する処理は、Bからの送信要求を実行せず、確認済みAを参照できるならAで返信案作成に戻すことです。ただし、Aも廃止済みだったり、対象サービスの変更で成立しなくなっていたりする場合は、単に古いから戻してよいとはいえません。現在の用途に使える確認済み版を選び、見つからなければ手動の下書き作成などへ切り替えます。

版名やハッシュ値で分かることを限定する

ファイル名の版番号は、人が書き換えられるラベルです。内容が変わっても版番号が同じなら、番号だけの照合では検出できません。内容から計算するハッシュ値を、保護した基準値と比べる方式なら、承認した内容との不一致を検出する材料になります。

ただし、ハッシュ値が合うことは、基準となる内容と一致することを示すだけです。基準そのものが不正、あるいは承認時の点検が不十分なら、内容の安全性は保証しません。前述のRAG Security Cheat Sheetも、ハッシュ値の一致は承認時の基準と同じであることを示すだけで、内容が安全であることまでは示さないとしています。同じ資料は、文書と基準値の両方を差し替えられる攻撃者なら照合を通過させられるとも注意しています。テンプレートに適用するときも、基準値を配布物と同じ権限で自由に変更できる場所へ置かないなど、照合先を守る必要があります。

テンプレート本体と利用者が埋める入力欄も分離します。本体が承認済みでも、問い合わせ本文として貼り付けた外部文書が、追加の操作指示を含むことはあります。本体の一致を確認した後も、入力欄の内容は処理対象の資料として扱い、共有テンプレートの権威を引き継がせません。許可する差し替え箇所を限定し、その値から送信先や権限設定を自動生成しないことも確認します。

改行や文字コードの変換を行う場合は、何を照合対象にするかを決めておきます。整形差分を許すための正規化が、送信先や否定文の変化まで消してはいけません。実行に使う内容と、承認時に読んだ内容の対応を説明できない変換は、先に見直します。

改変版を止めた後の確認

配布を止めても、取り込まれたコピーや実行済みの処理が自動で元へ戻るとは限りません。利用記録から、Bを取り込んだ実行設定、会話、共有先を調べます。返信案を作っただけなのか、送信要求が拒否されたのか、実際に送信されたのか、結果が不明なのかを分けます。

送信結果が不明な場合は、同じ処理をやり直す前に実行記録と送信先の状態を照合します。確認済み版へ戻す作業と、既に送った情報への対応は別の作業です。利用範囲を追えないときは、分かっている範囲と未確認の範囲を記録し、影響なしと結論付けません。

安全確認では実サービスの送信・権限変更を無効にし、A、B、版名だけ同じ別内容、取得できない配布物を使います。Aでは下書きが作れること、Bや不一致版では追加操作を拒否すること、取得不能なら未確認として利用を保留することが期待結果です。さらに、正当な修正を承認した版が通常利用できるかも確かめます。これらは試験計画上の期待で、実測結果ではありません。

点検担当者は、採用した内容、承認者、配布元、適用先、停止した版、復帰先を一組で確認します。利用先を追う仕組みや更新時のレビューには運用負担がありますが、同じファイル名を信じる運用では、その負担を削った分だけ影響範囲の調査が難しくなります。共有範囲と操作の影響に合わせ、追跡できる経路から利用を始めます。

直接・間接・蓄積型のプロンプトインジェクションと防御の位置は「直接・間接・蓄積型プロンプトインジェクションの防御位置を選ぶ」、LLMアプリで守る資産と信頼境界の洗い出しは「LLMアプリの何を守る? 資産・入口・信頼境界を洗い出す手順」で解説しています。

出典・参考資料

  1. OWASP「Retrieval-Augmented Generation Security Cheat Sheet」(確認日:2026年10月26日)
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この記事を書いた人

さかっぺのアバター さかっぺ PAP Research運営 / AIガバナンス・アーキテクト / プロンプトデザイナー

ITインフラの実務経験をもとに、AIの安全性と実用性を両立する仕組みを研究。PAP Researchでは、AIモデルの継続観測と、プロンプト・AI技術の実務解説を発信しています。

経歴や研究方法、発信方針は運営者プロフィールで紹介しています。

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