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AIへの依頼は、作業動詞に加えて「残す情報」「追加してよい内容」「判断基準」「不明な場合の扱い」を指定すると、期待する出力を区別しやすくなります。「分かりやすくまとめて」だけでは、要約に評価が入り、比較が推奨に変わる余地があります。動詞を言い換えるだけで済ませず、回答に何を含めるかを短く定めてください。
六つの作業を区別する目的は、難しい分類を覚えることではありません。原資料の説明が欲しいのか、条件に合う選択が欲しいのかを、出力と照合できる形にすることです。
この記事は、六つの作業の違いと出力の境界を扱います。これらが一つの依頼に混ざったときの分け方と処理の順序は「要約・比較・提案が混ざった依頼を、作業の種類に分けて処理する」で解説しています。
同じ商品資料でも、六通りの答えがある
以下は架空の通勤用バッグの商品資料です。価格と仕様は説明用の仮定値で、実在商品の案内ではありません。
- A:税込12,000円、重量800g。はっ水加工。完全防水ではない。15インチのノートPCを収納可能
- B:税込10,000円、重量1,000g。15インチのノートPCを収納可能。防水性の記載はない
- 比較に使える資料はこの二行だけ。耐久性、背負い心地、在庫、送料は不明
「この商品をまとめて」とだけ依頼し、AIが「軽くて雨に強いAがおすすめです」と答えた場合を考えます。軽さの比較は重量に基づきますが、「雨に強い」は完全防水ではないという条件を弱めかねません。「おすすめ」には、価格より重量を重視するという基準も追加されています。要約を頼んだつもりなら、少なくとも推奨は別欄にする必要があります。
まず、六つの動詞で許される処理を整理します。
| 作業 | 求める出力 | 勝手に足さないもの |
|---|---|---|
| 要約 | 原資料の意味と重要条件を保った短い説明 | 根拠のない評価、推奨、新しい仕様 |
| 比較 | 共通の軸で並べた一致点と相違点 | 未記載項目の補完、一律の優劣 |
| 提案 | 利用目的・制約に応じた案と理由 | 未承認の条件変更、事実としての創作 |
| 判定 | 指定した基準への適合・不適合・未確認 | 基準外の印象、欠損値の推測 |
| 翻訳 | 指定言語で意味と条件を保った表現 | 原文にない効能や約束、条件の削除 |
| 抽出 | 指定した項目と原文の対応 | 書かれていない値、解釈を混ぜた転記 |
この表は依頼を整理するための実務上の分け方です。例えば比較の中で差額を計算してよいか、翻訳で単位を換算してよいかは、目的に応じて指定します。動詞だけから、あらゆる追加処理が自動的に許可されるわけではありません。
要約は短縮、抽出は項目の取り出し
要約の改善例は、「AとBの特徴を二文で要約してください。価格、重量、PC対応を残し、Aが完全防水ではないこととBの防水性が未記載であることを区別してください。評価や推奨は加えないでください」です。
期待する内容は、Aが12,000円・800gで、Bが10,000円・1,000gであること、双方が15インチPCに対応すること、防水性について資料が示す範囲です。二文に収めにくければ、重要条件を消して見た目だけ整えるより、文数と保持条件のどちらを優先するか確認します。短さの指定で内容を変えないためです。
抽出なら、「商品名、税込価格、重量、PC対応、防水性の記述を表へ取り出してください。原文にない項目は『記載なし』としてください」と依頼できます。Bの防水性を「なし」とすると、機能がないという意味にも読めるため、資料に記載がない状態を明確にします。
抽出結果には、必要に応じて原文の箇所も添えます。値だけを受け取ると、12,000円を税抜価格と取り違えたときに気付きにくくなります。回答後は、数字だけでなく単位と税込・税抜、否定表現、未記載の表示まで元資料へ戻して確認してください。
要約と抽出を一緒に頼む場合は、先に抽出表で材料を確かめ、その表と原資料から要約を作る方法もあります。ただし、抽出の誤りをそのまま後段へ流すと要約も誤るため、中間結果を見る役割は残します。
比較は観点を揃え、判定は基準を固定する
比較の依頼は、「価格、重量、PC対応、防水性の四軸で比較してください。差額と重量差は計算してよいですが、総合順位は付けないでください」とできます。この条件なら、AはBより2,000円高く、200g軽いと整理できます。計算は12,000−10,000=2,000円、1,000−800=200gです。
ここで「軽いからAが優れている」とまで書けば、比較に評価基準を追加したことになります。重さと価格のどちらが重要かは、使う人の目的で変わります。比較表には違いを置き、優先順位を付ける段階を分けます。
判定では、条件をさらに明確にします。「税込価格11,000円以下、重量900g以下、15インチPC対応の三条件をすべて満たすか判定してください。各条件の結果と根拠を示し、不明な項目は未確認としてください」という依頼です。
この基準なら、Aは重量とPC対応を満たしますが、価格を満たしません。Bは価格とPC対応を満たしますが、重量を満たしません。したがって双方とも三条件すべてには適合しません。AIがどちらか一方を必ず選ぼうとして「総合的にA」と答えたら、判定を提案へ変えてしまっています。
「記載なし」が判定へ与える影響も確認します。仮に条件に完全防水を加えるなら、Aは原文の否定と照合して不適合、Bは情報がないため未確認です。どちらも購入判断を進められない場合があっても、その理由と次の対応は違います。Bは仕様の照会によって判定が変わる可能性を残します。
提案では、どの条件を動かしてよいかを書く
提案の依頼は、「三条件に合う商品がない場合は、その事実を先に述べてください。価格か重量の条件を見直す案を各一つ示してください。ただし、どの条件を緩めるかは利用者が決めるものとし、条件を変更済みとして商品を推奨しないでください」とできます。
この場合、価格上限を12,000円に変えればAが候補になること、重量上限を1,000gに変えればBが候補になることを示せます。どちらも元の基準には適合していないという情報を残します。ここでの「候補」は、背負い心地や在庫まで確認した購入推奨ではありません。
依頼者が「重量900g以下は必須。予算は12,000円まで調整できる」と答えたら、条件を更新してAを検討候補にできます。新しい予算を根拠に判断したことを明示し、以前の11,000円基準にも合っていたかのように説明しないでください。
提案は、新しい案を考えてよい作業です。ただし、新しい事実まで作ってよいわけではありません。「Aなら長時間でも疲れない」「来週必ず届く」は、この資料からは確認できません。創意工夫を認める欄と、事実として固定する欄を分けると、使える提案になっているかを点検できます。
翻訳では、魅力的な説明への書き換えを分ける
Aの「はっ水加工。完全防水ではない」を英訳するなら、「Water-repellent finish. Not fully waterproof.」のように、性質と否定条件を保つ例が考えられます。「Waterproof protection for any weather.」へ変えると、原文より強い性能を約束するため、同じ意味の翻訳にはなりません。
改善した依頼は、「商品資料を英訳してください。価格は日本円のまま、重量はgのまま保持し、完全防水ではないという条件を落とさないでください。販売コピーとしての言い換え案があれば、忠実訳とは別欄に出してください」です。これは説明用の例文で、販売表示としての採用前には対象市場での用語と表現を確認します。
翻訳と広告文作成を同じ欄で処理すると、読みやすさのために条件を削ったのか、意味を取り違えたのか分かりにくくなります。忠実訳を基準に残したうえで、別欄の表現案にどの変更を加えたかを確かめる方が、原文との違いを追いやすくなります。
複数の作業は、欄と確認条件をセットで依頼する
実際には「仕様を抽出し、比較して、条件に合う案を提案して」と依頼することも多いでしょう。その場合は、抽出表、比較、条件判定、提案の順に分け、各欄で使った材料を追えるようにします。すべての依頼を別会話へ分割する必要はなく、一回答の中で欄を分けることから始められます。
Anthropicのプロンプト連鎖の説明では、作業を段階に分け、途中の結果を確認する構成が紹介されています。ここでも、前の欄が間違っていれば後の欄を生成し直すだけでは足りません。元資料の値、比較の観点、判定基準のどこが変わったかを確かめます。
回答後の点検は、各欄の役割に合わせます。要約には新しい評価がないか、抽出は原文に対応するか、比較は同じ軸か、判定は全条件を扱ったか、翻訳は意味を保持したか、提案は変更可能な範囲を守ったかを見ます。期待どおりでなければ、動詞を強く繰り返すより、混ざった情報と不足した条件を指定して直してください。
基本から確認する:この記事の前提になる考え方は、「プロンプトの書き方ガイド(依頼文の基本6項目と例文)」にまとめています。

