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大きな依頼を作業単位へ分けるタスク分解の基本

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大きな依頼を分けるときは、最終的に何を判断できればよいかを先に決め、そこへ必要な中間成果を置きます。作業名に加えて、各工程で何を受け取り、何を返し、どの条件なら次へ進めるかを決めるのがタスク分解の基本です。

一つの依頼を細かくすれば、必ず品質が上がるわけではありません。分割のたびに資料や条件を渡し直し、結果を統合する負担が増えます。途中の成果を確認する意味があるところで区切り、小さく単純な作業はまとめる、という判断が必要です。

目次

最終成果から逆向きに必要な作業を考える

架空の契約案AとBについて、「更新手続きの違いを担当者が説明できる比較メモを作る」と依頼する場面を考えます。ここでは契約の締結判断や個別の法的助言ではなく、二案の記載と条件を整理する作業を扱います。資料は入力が許可された架空文書とし、外部送信や署名は行いません。

比較メモに必要なのは、違いの結論だけではありません。その結論を支える両案の該当箇所、同じ対象を比べていること、まだ確認できない点が必要です。そこで、成果を三段階で作ります。最初に、更新、通知期限、例外に関する条項を原文の箇所付きで抜き出します。次に、対象契約、日付、通知の起算点、例外などの条件を揃えて両案を比べます。最後に、確認できた差分と未確認事項を、担当者が読める文章へまとめます。

これは文章を三回生成するための分割ではありません。抽出した記載がなければ条件を比べられず、条件が揃わなければ差分の意味を説明できないという依存関係があります。原文の抜き出しと条件の比較が残っていれば、最終文がどこで前提を越えたかをたどれます。

AnthropicのBuilding effective agentsは、前段階の出力を次へ渡すprompt chainingと、途中の確認を挟む構成を紹介しています。同時に、まず最も単純な方法を探し、複雑さは必要なときだけ加えるよう勧めており、工程を増やす構成は待ち時間や費用と引き換えに性能を得るものだと説明しています。以下の契約比較の区切りは独自の作業設計であり、同社がこの案件で性能を実証したものではありません。

中間成果に何を残すか

架空の二案に、次の記載があるとします。

  • 案Aの更新条項:「満了日の30日前までに更新しない旨を通知しない場合、同じ条件で更新する」
  • 案Bの更新条項:「満了日の60日前までに更新しない旨を通知しない場合、同じ条件で更新する。ただし、特約がある場合は特約による」
  • 案Bには特約を参照する記載があるが、特約本文はまだ提供されていない

「BはAより30日早く手続きすればよい」と直ちにまとめると、Bの特約で扱いが変わる可能性が抜けます。また、「通知」が到達を意味するか発送を意味するかなど、提示文だけでは確定していないことを、作業者が勝手に補うべきではありません。

各工程の受け渡しを、次のように決められます。

工程 受け取る材料 返す中間成果 次へ渡す条件
条項抽出 案A・Bの提供範囲と資料一覧 原文、条項の位置、版、参照先、取得の有無 対象箇所を確認し、不足する参照先も記録できた
条件照合 抽出表と必要な参照資料 一致する条件、違う条件、未確認の条件 確定した比較と、保留する比較を分けられた
差分説明 照合結果と原文への参照 比較メモ、留保、次の確認先 各結論が照合結果に対応し、未確認が消えていない

抽出の完了は、すべての内容を知ったことを意味しません。提供された範囲を漏れなく確認し、足りない特約を不足として記録した、という完了もあります。その場合、次の工程へ渡せるのは部分的な成果です。特約に左右される結論を確定する許可まで渡したことにはなりません。

前工程が未完了なら結論を保留する

この例では、抽出担当がBの特約参照に気付かず、30日と60日だけを返すと、その後の比較は整って見えても前提が欠けます。条件照合の工程は数字を引き算するだけでなく、抽出結果に参照先と未取得情報があるかを確認する役割を持たせます。

特約が未入手の段階の比較メモは、「提示された更新条項では、Aは満了日の30日前、Bは60日前を通知期限としている。ただし、Bは特約を優先する記載があり、その本文が未提供のため、今回の契約に適用される期限は確認が必要」とできます。これは法的な適用を確定した説明ではなく、文書上の記載と不足を分けた整理です。

一方、条項の途中が欠けている、ページを読み取れない、二つの版が混在している場合は、抽出表自体が完成していません。その状態を「特約なし」などで埋めず、対象箇所の再取得へ戻します。戻る工程を決めておくと、差分説明だけを何度も書き直す手戻りを避けられます。

後で特約を入手したら、抽出表に追加し、条件照合を更新してから比較メモを直します。最終文だけを書き換えると、古い照合結果が次回使われる可能性があるため、依存する中間成果も同じ版に揃えます。どの結論が変わるかを記録し、影響のない箇所まで全面的に作り直す必要があるかは別に判断します。

どこまで分けるかは確認の価値で決める

同じ契約比較でも、短い二文の表記差を示すだけで、参照先も条件もすべて提示されているなら、一回の依頼の中で抽出と説明をまとめられます。その場合も、原文の位置と条件を残すという確認は省きません。工程を別々に呼び出すことと、論点を区別して扱うことは別です。

逆に、複数の添付文書や特約、対象ごとに違う条件があるなら、抽出と照合を分けた方が、どこで不足したかを確かめやすくなります。別の担当者が成果を受け取る場合も、中間成果を明示する価値があります。分ける理由は文章の長さだけでなく、確認する対象や担当が変わることにあります。なお、資料が長すぎて一度に入力できないために区切る場合は、トークンの上限と区切り目の欠落・重複という別の問題が加わるため、ここでの作業単位の分解とは分けて考えます。

分けすぎの兆候は、各工程の成果がほぼ同じ文章になっていること、単語や語尾の修正ごとに別依頼を作っていること、資料を引き継ぐ説明が本体の作業より大きくなっていることです。その場合は、判断基準が共通する処理をまとめます。たとえば条項番号の整理と原文の抜き出しは、同じ資料を読んで行えるなら一つの工程にできます。

ただし、まとめた結果、未取得の参照先が見えなくなるなら、統合の仕方を見直します。工程数を減らす目標より、必要な判断材料を保持できるかが基準になります。処理回数、待ち時間、人の確認時間を実際の案件で記録すれば、分割の負担に見合う確認ができているかを後で検討できます。この例では、その効果を測定していません。

依頼文には作業名より受け渡す条件を書く

この案件の依頼は、次のように組み立てられます。未実行の説明用例であり、実際には入力が認められた資料と確認したい対象へ差し替えます。

「二つの契約案の更新手続きを比較するメモを作ってください。まず、更新条項と関連する参照先を、原文の位置とともに整理してください。参照先が未提供なら、その不足を残してください。次に対象条件を照合し、記載の差と適用未確認の点を分けてください。最後に、照合済みの範囲で差分を説明してください。途中で欠けた資料は推測で補わないでください。」

回答後は、抽出表と原文、照合結果と抽出表、最終文と照合結果を順に見ます。最終文だけを読んで「自然だから合格」とせず、未確認の特約が途中で消えていないかを追います。別の担当者へ渡すなら、どの版を対象にしたかと、何を得れば再開できるかも添えます。

タスク分解は、専門判断、資料へのアクセス権、外部操作の承認を置き換えません。作業を分けて比較メモが完成しても、契約への署名や相手方への送信まで許可されたことにはなりません。分解によって見えるようにするのは、目的へ進むための作業と不足です。中間成果と進行条件を揃えることで、結論を保留する箇所と、まとめて進められる箇所を区別できます。

出典・参考資料

  1. Anthropic Engineering「Building effective agents」(確認日:2026年10月12日)
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この記事を書いた人

さかっぺのアバター さかっぺ PAP Research運営 / AIガバナンス・アーキテクト / プロンプトデザイナー

ITインフラの実務経験をもとに、AIの安全性と実用性を両立する仕組みを研究。PAP Researchでは、AIモデルの継続観測と、プロンプト・AI技術の実務解説を発信しています。

経歴や研究方法、発信方針は運営者プロフィールで紹介しています。

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