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AIの回答に、元資料より細かな日時、人数、条文番号、型番が現れたら、その値の出所を確かめます。具体的な記述であっても裏付けがなければ、推定値へ置き換えるのではなく、確認できる範囲と不明な範囲へ戻します。訂正した値を使っていた割合や結論も、一緒に見直す必要があります。
本稿では、根拠のない細部が具体的な値や名称として示されることを、虚偽精密化と呼びます。桁が多いことだけが問題なのではありません。原資料にない「80人」も、存在を確認していない型番も、根拠があるように見える形で補われれば点検の対象になります。
自然な文章からは確認状態が分からない
生成AIは、文章として自然な説明の中に、誤った内容や裏付けのない引用を含めることがあります。NIST AI 600-1も、もっともらしい誤内容を出力する問題と、出典や引用を確認する対応を扱っています。読みやすさと、根拠の有無を別々に確認する必要があります。
不明欄を残すように頼んでも、出力の細部は原資料へ戻って確かめます。「AIが見栄を張った」「隠そうとした」など、意図を推測しても、その値の出所は明らかになりません。確認するのは、どの入力や資料にその記述があり、回答へどう変わって入ったかです。
数字がたまたま実際の値と一致することもあり得ます。その場合でも、出所を確認していない回答を、照合済みの情報として扱うことはできません。まず「この資料は裏付けているか」と「実際の値は正しいか」を分けて調べます。
人数のない調査資料に人数が加わった例
架空の社内ツール利用調査の要約を作る場面を考えます。提供資料には「2026年度の秋に調査を実施」「操作が分かりやすかったという意見がある」「初回設定が難しいという意見もある」と書かれています。回答者数、各意見の件数、割合、具体的な実施日は記載されていません。
依頼は「調査の結果と改善点を要約してください」です。ところが回答に、「10月15日に80人へ調査し、64人が操作を評価しました。支持率80%なので、現行方式は広く受け入れられています」と出たとします。この回答は説明用の作例であり、実際にAIへ投入して得たものではありません。
問題は計算だけではありません。64÷80が80%になる計算は合っていますが、64人と80人の根拠が資料にありません。また、「操作が分かりやすかった」という発言を、そのまま方式全体への支持として数えることもできません。
| 回答にある記述 | 原資料で確認できること | 修正後の扱い |
|---|---|---|
| 10月15日に実施 | 2026年度の秋に実施したとの記載のみ | 具体日は未確認。年度と季節の記載を保つ |
| 回答者80人 | 回答者数の記載がない | 人数は未確認とする |
| 64人が操作を評価 | 肯定的意見があるが件数は不明 | 意見の存在と件数を分ける |
| 支持率80% | 支持の定義、分子、分母のいずれも確認できない | 割合を削除し、算出できない理由を残す |
| 現行方式が広く支持される | 肯定的意見と改善要望の両方がある | 全体の支持を結論しない |
元資料に記載がないからといって、80人という実際の値が必ず誤りだと決め付ける必要はありません。ただし、この資料を根拠に80人と断定することはできません。調査担当者が持つ回答一覧など、人数を確認できる資料を取得するまで未確認として扱います。
確定・推定・未確認を混ぜずに回答を直す
この例の確定事項は、「提供資料に肯定的意見と初回設定への改善要望がある」という範囲です。調査全体の実態を独立に確定した意味ではありません。資料が示す対象と確認の範囲を一緒に述べます。
推定として残せるのは、「初回設定について、説明方法や支援を確認する余地がある」という検討上の見立てです。これは改善要望を受けて調べる方向を示しており、初回設定が不満の主要因だと確認したわけではありません。推定を置く必要がなければ、無理に三分類を埋めなくても構いません。
未確認は、回答者数、意見ごとの件数、具体日、支持の定義、対象者の選び方です。これらを「おそらく80人程度」「約8割」という丸い値へ変えても、根拠不足は解消しません。元の細かな値を丸めることと、確認できた範囲へ戻すことは違います。
修正後の回答は、「提供資料には、操作の分かりやすさを評価する意見と、初回設定の改善を求める意見が記載されています。回答者数と意見別の件数がないため、支持率や意見の多寡は判断できません。初回設定のどの作業が難しいかを追加確認すると、改善案を検討できます」とできます。
この回答なら、確認できた意見を使いながら、全体の評価と割合を保留できます。人数が分かるまで要約全体を止める必要はありません。一方、経営会議へ支持率を報告する用途なら、分母と分類基準が揃うまで、その指標の提示を保留します。
空欄は理由と確認先を残す
表に人数の欄が必要なら、「未確認(提供資料に記載なし、調査担当へ回答一覧を確認)」と書けます。表示上の制約で空欄にする場合も、空欄が何を意味するかを注記します。ゼロ人、該当なし、未回答、未確認は異なる状態です。
AIへの依頼例は、「日時・人数・名称を抽出し、元資料の該当箇所を示してください。記載がない値は未確認とし、推定や丸めで補わないでください。割合は分子・分母・分類基準が確認できるときだけ示してください」です。対象資料と必要な項目を差し替え、回答後に人が原文対応を点検します。
同じ調査の別資料を見つけた場合も、調査対象と期間が一致するかを見ます。「回答80件」という記載があっても、同じ人の複数回答を含むなら80人とは限りません。人数と回答件数を合わせるために、重複の扱いや集計単位を確かめます。
肯定的な記述が複数あっても、同じ人が複数の意見を書いた可能性があります。発言の数から参加者数へ変換せず、集計の定義が分かるところまで戻します。確認先へは、「80人で合っていますか」と推測値を誘導的に渡すより、対象調査の回答者数と算定方法を尋ねる方が、回答者数と集計方法の根拠を直接確認できます。
日時・条文番号・型番も同じ原則で確かめる
日時では、資料が示す年、月、日、時刻、タイムゾーンのどこまで確定しているかを見ます。「来月」「秋」「予定」を、根拠なく具体日や確定日時へ変えません。相対的な日付を変換する場合は、元資料の基準日が必要です。
条文番号では、番号が実在するかだけでなく、対象の法令名、適用時点、条文の内容が主張と合うかを確認します。条番号を一つ直しても、その条文が説明を支えていなければその主張の出典としては採用できません。ここでは個別の法令を判断するのではなく、確認に必要な対応を示しています。
型番では、シリーズ名と個別モデル、地域別の型番、付属品や別売品を区別します。元資料がシリーズ名だけなら、似た名前の型番を埋めず、対象製品を特定できる仕様書や現物表示を確認します。名称が似ていることから互換性まで推定しないようにします。
いずれも「細かく書かれているから誤り」と決め付けるのではありません。原資料にある精密な情報は、その単位や条件を保って使います。問題は、根拠のない精密さが加わった箇所です。
訂正は依存する表と結論まで戻す
人数を未確認へ戻したら、本文の数字だけでなく、割合の表、グラフ、見出し、提案の根拠も見直します。この例では、80%を前提とした「現行方式を継続する」という結論も再検討の対象です。数値を消した後に結論だけ残すと、根拠のない判断が維持されます。
訂正の記録には、削除した値、元資料で分かる範囲、影響した箇所、次の確認先を残します。根拠を得た後は、その対象と集計方法が一致することを確認して値を戻します。新しい数値を見つけただけで、以前の割合や結論を自動的に復活させないようにしてください。
AI回答の古い情報・対象違い・過剰な断定の点検は「AI回答の古い情報・対象違い・過剰な断定を点検する」で解説しています。

