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製造不適合のなぜなぜ分析で原因の根拠と是正措置を分ける

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製造不適合の分析でAIに「なぜ」を並べさせても、原因を確認したことにはなりません。まず観察事実を固定し、原因候補ごとに根拠と不足を置きます。対策は確認した原因に対応させ、実施したことと効果が続いていることを別々に確かめます。

なぜなぜ分析は、ある現象が起きた理由を順に問い直す方法です。問いを五回続けることや、最後を「教育不足」にすることを目標にせず、各接続を資料や現場の確認で支えられるかを見ます。根拠が途切れたところは、もっともらしい物語で埋めず原因仮説のまま残します。

目次

不適合記録から分かる事実を固定する

架空の工場で、出荷前検査により、包装に貼られた品名ラベルが製造指示と異なる製品を発見したとします。対象はある日のロットLで、検査した200個のうち10個が不一致でした。対象品を保留し、出荷判断は品質責任者が行う運用を仮定します。件数や記録は説明用で、実在の事故ではありません。

AIへ渡せる資料として、不適合記録、製造指示書、ラベル印刷履歴、作業手順書、交代時の引き継ぎ記録を用意します。ただし、印刷に使ったテンプレートの変更履歴はまだ入手できていないとします。機密の製品情報や個人情報は、入力が認められた範囲に絞る前提です。

この時点で確認できるのは、対象ロット、検査した範囲、不一致の内容、記録上の時刻です。「作業者が確認を怠った」「教育が不足していた」は、その資料だけで確認できたとは限りません。検査200個中10個という5%も、検査した対象の割合であり、未検査の製品や別のロットの不適合率へ広げません。

現象と原因候補を同じ欄に入れない

最初にAIへ、「観察事実と原因候補を分け、原因候補には支える資料、反対の資料、追加確認を付けてください。資料にない行動や担当者の意図を補わないでください」と依頼できます。以下は未実行の整理例です。

区分 この案件での記述 確認状況と次の対応
現象 製造指示とラベル品名が10個で一致しない 対象製品と指示書の対応を品質担当が照合
原因候補A 印刷時に旧テンプレートを選んだ 印刷履歴の版とテンプレート履歴が未照合
原因候補B 別製品用の印刷済みラベルが混在した 使用残と保管、切替時記録を確認する必要あり
原因候補C 指示書と正規ラベルの対応表が誤っていた 正式版と承認記録を確認する必要あり
暫定対応 対象品を保留して影響範囲を調べる 原因確定と独立して、現場の手順と権限で判断

候補Aがもっともらしくても、BやCを調べず採用すると、別の経路を見落とします。反対に、すべての可能性を無制限に列挙すると調査が進みません。現象を説明でき、資料や現場で確かめられる候補から優先します。

原因分析の考え方について、ASQのRoot Cause Analysisの解説は、出来事の時間順、変更点、問題を防止・検出する仕組みなど、複数の分析方法を示しています。また、原因分析だけでは改善結果は得られず、問題解決の取り組みへ接続する必要があると説明しています。以下の表と判断手順は、本件を説明するための運用例です。

「なぜ」のつながりごとに証拠を置く

AIが次のような連鎖を作ったとします。「表示が違ったのは旧版を使ったから。旧版を使ったのは確認しなかったから。確認しなかったのは教育不足だから」。文章はつながっていますが、各理由の根拠は示されていません。

最初の接続を確かめるには、該当の印刷物、印刷履歴の時刻・版、実際に使われたテンプレートを対応させます。旧版のファイルが保管されているという事実だけでは、そのロットで旧版が使われたとは言えません。同じ名前のファイルがあれば、内容や版の対応も見ます。

次の接続では、作業手順が何を求めていたか、確認の記録はあるか、記録の内容が実物と対応するかを調べます。チェック欄が空欄でも、確認が行われなかったと直ちに断定せず、未記録なのか、記録の所在が違うのかを確かめます。記入がある場合も、実物との照合が適切だったかは別の確認です。

さらに教育を原因候補とするなら、対象者が何を教わり、どの版の手順を使い、正しく実行できる条件があったかを調べます。訓練を受けていても画面で旧版を選びやすい場合や、承認済みの対応表自体が誤っている場合があります。個人への注意だけで説明を閉じず、作業を取り巻く条件も調べます。

これらの確認は、AIが現場の事実を知っているという前提では進められません。記録の照合は品質担当、テンプレートと設定の確認は管理担当、作業条件の確認は現場責任者など、権限と知識のある人へ引き継ぎます。

根拠のある原因から対策を選ぶ

追加調査で、当該印刷履歴が旧版テンプレートに対応し、品名がその旧版と一致することを確認した、という条件を仮に置きます。この場合、旧版の使用が不一致につながったという説明は支持されます。それでも「教育不足が真因」とまでは確定しません。

真因と呼ぶ場合は、何が起きる経路をつくり、その原因への対策が同じ不適合の再発防止につながると判断した根拠を示します。原因が一つとは限らず、旧版を選べる仕組みと切替時の確認不足が重なる場合もあります。確認できた原因と、まだ残る原因候補を分けて記録します。

対策案には、旧版を通常選択から外すこと、製造指示と印刷対象の対応を確認すること、切替手順を見直すことなどが考えられます。ただし、どれを採用するかは、実際の工程と権限、他製品への影響を確認して決めます。この記事の例を理由に、本番設備や製造設定を変更することはできません。

不適合品を正しいラベルに直す処置と、再発につながる原因を取り除く是正措置も分けます。貼り直した結果が正しいことは製品の確認であり、次のロットでも誤版を選ばないことの証明にはなりません。対象範囲の確定や出荷判断は、原因分析が終わるまで何もせず待つのではなく、現場の管理手順に沿って品質責任者が判断します。

実施確認と効果確認を別の記録にする

「手順書を改訂した」「対象者へ説明した」は実施の記録です。是正措置の効果を見るには、同じ不適合が起こる条件を含め、何を、どの範囲で、いつまで確認するかを実施前に決めます。

この案件なら、品目切替を含む対象期間について、印刷版と指示書の一致、作業記録、発見した不適合件数を追います。製品種類、検査方法、検査数が変わったときは記録し、条件の違う割合をそのまま比較しません。観測期間と件数は、工程の頻度や影響に応じて品質担当が定めます。

例えば、対策後に検査した200個で不一致がゼロだったと仮定しても、その結果だけで再発しないとは言えません。品目切替がなかった期間なら、原因が起きる場面を十分に見ていない可能性があります。また、対策と同時に検査方法を変えた場合は、件数の変化を対策一つの効果と決め付けないようにします。

確認は正しいラベルが出ることだけでなく、正規の品目切替ができなくなるなどの副作用にも及びます。効果が確認できなければ、原因仮説、対策の実装、観測条件のどこが不足したのかへ戻ります。不具合を再現する試験が必要な場合は、許可された試験環境と安全な方法を担当者が決め、本番で故意に不適合を作らないようにします。

引き継ぐときは未確認の接続を残す

報告書は「旧版使用が原因。教育を徹底して完了」と縮めず、対象の現象、原因を支える記録、未解決の候補、暫定対応、是正措置、効果確認の状態を分けて渡します。未確認なら、その資料を持つ担当者と、再判断に必要な条件を付けます。

別の製品へ横展開する際も、同じ不適合名だけで対策をコピーしません。印刷経路、版管理、切替作業が同じかを確かめ、共通する原因と製品固有の条件を分けます。AIが整えた説明の完成度より、各「なぜ」を支える資料と、対策後に何を確認したかが追えることを、調査と対応を完了できるかの判断材料にします。

相関から因果を読み込まないための考え方は「AI利用と作業時間の関連から因果を読み込まないために」、事実・仮説・推論を分けて検証を選ぶ方法は「AIの事実と仮説と推論を分けて作業に合う検証を選ぶ」で解説しています。

出典・参考資料

  1. American Society for Quality「What is Root Cause Analysis(RCA)?」(確認日:2026年10月19日)
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この記事を書いた人

さかっぺのアバター さかっぺ PAP Research運営 / AIガバナンス・アーキテクト / プロンプトデザイナー

ITインフラの実務経験をもとに、AIの安全性と実用性を両立する仕組みを研究。PAP Researchでは、AIモデルの継続観測と、プロンプト・AI技術の実務解説を発信しています。

経歴や研究方法、発信方針は運営者プロフィールで紹介しています。

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