- 公開日
一度に処理できない長文は、意味のまとまりで分け、各部分が共有する目的、対象、定義、制約を同じ記録から渡します。区切りをまたぐ例外や参照先を中間記録に残し、統合後に原文と照合するところまでを設計します。小分けにして得た要約をそのまま連結すると、各部分では自然でも、全体で定義が変わったり同じ内容を重複して数えたりすることがあります。
分割前には、何の上限に当たったかを確かめます。資料が入力しきれない場合と、回答が途中で終わる場合では、見直す箇所が違います。資料の取得漏れをトークン制約と決め付けず、実際に読み取れた範囲と、利用環境の処理状態を確認します。
この記事は、一度に入力できない長文を分割し、結果を統合する方法を扱います。入力は収まっているのに要約の後半が薄くなる問題は「長文要約で後半の条件や例外を落とさないための依頼方法」で扱います。
入力と出力に使える範囲を分けて考える
トークンは、モデルが文章を処理するための単位です。文字数と同じではなく、同じ文字数でも内容や言語によって必要量が変わります。入力資料だけでなく、指示、会話履歴、回答に必要な余地を含めて、使うモデルと環境の条件を確認します。特定の文字数を、どのモデルにも安全な分割幅として固定することはできません。
2026年10月12日に確認したOpenAI APIのReasoning modelsでは、対象の推論モデルについて、推論用トークンがコンテキストを消費し、最大出力の設定が可視回答だけの予算ではないことを説明しています。設定した上限によっては、回答を得る前に不完全な応答となり得ます。これは対象APIの説明であり、各社の画面や全モデルの共通仕様ではありません。
上限を広げられる場合も、必要以上に大きくすれば品質が保証されるわけではありません。部分ごとに根拠を確認する必要があるなら分割が役立ちますが、分割には繰り返す入力、受け渡し、統合の負担がかかります。制約の回避と作業の確認しやすさを合わせて判断します。
架空の報告書で分割の境界を決める
架空の研修調査報告R第3版を要約する例を考えます。目的は、読者が完了率の意味と、集計上の注意を理解できる説明を作ることです。報告には次の内容があります。実在の研修、データ、測定結果を表すものではありません。
- 第1節の定義:「参加者」は研修の登録者を指し、見学者と開催前のキャンセル者を除く
- 第2節の集計方法:「完了者」は全課題を提出した参加者を指す。「付録Aも参照」との記載がある
- 第3節:部署別の集計と所見
- 付録A:機器不調により指定の代替課題を提出した参加者も完了者に含める
第2節までを前半、付録Aを含む部分を後半として機械的に分けると、前半だけの要約は「全課題を提出した人だけが完了者」と断定するかもしれません。後半だけの要約は、そもそも誰が参加者かという除外条件を知らないまま書かれる可能性があります。
区切るときは、節や表とその注記をなるべく一緒にします。それでも離れている定義と付録をすべて同じ部分へ入れられないなら、文書全体で使う共通記録と、後から統合する参照関係を用意します。離れた場所にあるという理由で、例外を無理に切り捨てません。
共通前提と部分ごとの記録を分ける
共通前提には、目的、対象資料の版、重要な用語、要約で保持する条件を置きます。この例なら、R第3版を使うこと、完了率の説明が目的であること、参加者の定義は第1節を参照することを共有します。付録Aをまだ読んでいない段階では、その内容を推測で共通前提へ入れず、参照待ちと記録します。
部分ごとの成果には、単なる要約だけでなく、根拠箇所と依存する情報を残します。次の記録は作業用の例です。
| 部分 | 取り出した内容 | 依存・参照先 | 統合時の扱い |
|---|---|---|---|
| R第3版・第1節 | 参加者は登録者から見学者・開催前キャンセル者を除く | 文書全体の参加者定義 | 後半でも同じ定義を使う |
| R第3版・第2節 | 全課題を提出した参加者を完了者とする | 付録Aの扱いを確認する必要がある | 例外の確認前は限定を付けて保持する |
| R第3版・第3節 | 部署別の所見 | 参加者と完了者の定義、集計表の注記 | 定義と分母を確認してから説明する |
| R第3版・付録A | 指定代替課題を提出した参加者も完了者に含む | 第2節の完了者定義を補う | 原則と例外を一緒に説明する |
AIにこの表を作らせても、参照先の発見や意味の保持を保証するものではありません。担当者は原文の見出し、参照表現、脚注を確認し、表にない重要な接続が残っていないかを見ます。資料の版が違う部分を混ぜないことも、ここで確認します。
共通前提を後から更新した場合は、古い前提で作られた部分要約を特定します。付録Aの発見後に完了者の説明が変わるなら、第2節と第3節に関する出力を見直します。後から作った部分だけが新定義を使い、前半は古いまま、という状態を残さないようにします。
重ねて渡すときは出所を保つ
境界付近の文を前後の部分へ重ねて渡すと、文の途中で意味が切れる問題を減らす助けになります。ただし、どれだけ重ねればよいかは資料次第です。固定の割合だけで、離れた付録や例外を保持できるわけではありません。
重なった文章には、同じ原文箇所だと分かる参照を付けます。第2節の一文が前半と後半の両方に入ったなら、統合時は二つの独立した説明や証拠として数えません。内容が似ているから削るのではなく、同じ版の同じ箇所から来たことを確かめてまとめます。
反対に、第2節の原則と付録Aの例外は、どちらも完了者を説明していても同じ内容ではありません。「似た文を削除して」とだけ指示すると、例外が失われるおそれがあります。統合では、重複、補足、例外、矛盾を分けます。矛盾らしく見える記述も、対象時期や条件が違えば両立するため、原文へ戻って確認します。
分割用と統合用で依頼を変える
最初から各部分に最終結論を書かせるより、分割段階では材料を残し、統合段階で結論を組み立てる方が、依存関係を確認しやすくなります。AnthropicのBuilding effective agentsは、前工程の出力を次へ渡し、中間の確認を挟む構成を紹介しています。ここでの表や依頼文は、その考え方を使った独自の例です。
分割段階の依頼例は、「担当部分から定義、条件、例外、参照先、結論を根拠箇所付きで整理してください。担当外の箇所に依存する内容は参照待ちとし、全体の結論を補わないでください」とします。
統合段階では、「全ての部分記録と共通前提を照合し、同じ原文の重複をまとめてください。原則と例外を結び、未取得の参照先や解消できない矛盾を残してください。最終説明の各文を原文の箇所へ対応させてください」とします。これらは未実行の説明用例であり、実際の目的、資料、入力許可に合わせて使います。
統合へ全資料を一度に渡せない場合は、論点ごとの統合を先に行えます。この例なら参加者、完了者、部署別所見をそれぞれ整理し、最後に説明全体を照合します。その際も、途中の要約だけを根拠に確定せず、判断を変える定義や例外は原文へ戻れる状態を維持します。
最終結果は全体として読み直す
この例で残す説明は、「参加者は、見学者と開催前キャンセル者を除く登録者です。完了者には全課題の提出者に加え、機器不調で指定の代替課題を提出した参加者も含まれます」となります。全課題提出という原則だけでも、代替課題という例外だけでも、集計の意味を説明し切れません。
統合後には、未処理の部分がないか、同じ内容を二重に数えていないか、用語が途中で変わっていないかを確認します。部署別の数値を掲載するなら、表の値と定義に基づく分母も原文へ戻って照合します。部分要約がすべて作れたことを、全体の確認完了とは扱いません。
問題が見つかったときは、中間記録の参照先を使って戻る場所を決めます。未取得の付録なら取得へ、定義の不一致なら関連する部分の修正へ戻します。トークン上限に収めることと、説明に必要な条件を保持することの両方を満たすまでが、一つの分割作業です。
長文から残す情報を重要度で選ぶ方法は「Salience Scoringで長文から残す情報を決める」、プロンプトのトークン予算を配分して圧縮する方法は「プロンプトのトークン予算を配分し、重要条件を保って圧縮する」で解説しています。
基本から確認する:この記事の前提になる考え方は、「プロンプトの書き方ガイド(依頼文の基本6項目と例文)」にまとめています。

