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国内でのデータ処理が必要な業務では、まず「どの情報を、どの処理まで国内に限るのか」を根拠とともに決め、その条件を満たすサービス・モデル・機能の組合せを選びます。日本のリージョンを選択できても、保存、回答生成、外部検索、監視がすべて同じ場所で行われるとは限りません。必須の経路に未確認が残る候補は採用を保留し、確認を進めるか、機能を減らすなどの代替構成を検討します。
リージョンはサービスを配置する地域の単位、推論はモデルが入力から回答を生成する処理です。データレジデンシーという名称だけでは、保存場所の指定なのか、推論場所まで含むのかを判断できません。選定表には、地域名と一緒に何を対象とする条件なのかを残します。
国内要件の根拠と、対象データを先に定める
「国内で使う業務だから」という説明だけでは、必要な制約が定まりません。法令・業界ルールに由来する条件、顧客との契約、社内方針、性能や運用上の希望を区別します。法令を根拠にするなら、対象となる主体、情報、行為、法域、適用日を原文と照合します。契約であれば、締結した当事者と有効な版、該当条項、例外を承認できる主体まで確認します。法的な適用や条項の意味が不明なら、対象の構成図と資料を法務・契約担当者に渡して判断を求めます。
国内保存という要件を、担当者の解釈だけで国内推論へ広げることも、国内処理という要件を保存だけへ狭めることも避けます。特定の国内業務に一律の国内処理義務があると、本稿で認定するものではありません。
対象情報には、元のファイルだけでなく、抜粋、質問文、生成された回答、検索索引、本文を含むログを含めるかを明示します。文章を検索用の数値表現へ変換した埋め込みも、契約上の対象から自動的に外れるとは扱いません。公開情報と非公開情報が混在するときは、外部へ渡す部分をどこで分けるかまで決めます。
利用主体も固定します。同じブランド名でも、従業員が個人契約の画面へ入力する場合と、会社契約のAPIを業務システムから呼ぶ場合では、照合する契約・管理設定が変わります。モデルの名称、サービスの契約主体、実際の送信先を別々の欄にすることで、別プランの説明を根拠に採用する取り違えを減らせます。
保存先から、検索・監視・復旧まで経路をたどる
経路は「利用者の入力→アプリ→資料検索→モデル→回答保存」と書くだけでは足りません。各段階から監視、バックアップ、サポートへ情報が渡る枝も書きます。次の表は、調達・運用担当者が同じ構成を照合するための確認例です。
| 経路 | 確認するデータと処理 | 主に照合する資料・設定 |
|---|---|---|
| 入力・前処理 | 添付ファイル、文字抽出、一時ファイル、受付基盤 | アプリ構成、変換サービスの仕様、保存先 |
| 保存 | 原本、履歴、回答、検索索引の保管地域と保持期間 | 契約の対象データ、保存設定、削除手順 |
| 推論 | 質問、取得した抜粋、生成結果の処理地域 | モデル版、API、配置方式、接続先 |
| 検索 | 埋め込み生成、索引検索、再順位付け、Web検索の送信内容 | 機能ごとの提供地域、外部サービスの契約 |
| 監視 | エラー記録、処理経路の記録、入力・出力本文の収集 | アプリと提供者それぞれのログ仕様・送信設定 |
| バックアップ・復旧・支援 | 複製、障害時切替、調査用データの閲覧や移送 | 復旧条件、サポート条項、提供者への回答記録 |
同じ検索機能でも、索引の保存場所と、検索文を数値へ変換する場所は別の確認対象です。本文を外部検索へ送らない設計でも、検索語に顧客名や秘密の製品名を含めれば、その情報の送信が生じます。監視では、本文を除いたつもりでも、例外メッセージや添付された調査用ファイルに内容が残る経路を見ます。
各行には地域だけでなく、送信される項目、保持期間、実行主体、根拠の版と確認日、確認担当者を記録します。特に海外からのサポートアクセスを許すかは、保存地域の確認と分けて扱います。契約に国内という語があっても、アクセス元まで同じ意味で制限しているかは個別に照合します。
公開資料で見つからない項目は「未確認」とします。バックアップについて記載が見当たらないことを、バックアップが存在しない証拠にはできません。質問先には「国内対応ですか」だけでなく、「この機能の入力本文は、障害復旧や人による調査の際に、どの地域へ複製・移送されますか」と対象を示す方が、判断に使える回答を得やすくなります。
公式資料でも、保存と推論は別の条件になっている
2026年10月27日に確認したOpenAI APIのData controls in the OpenAI platformでは、Japanは地域内の保存に対応し、地域内の処理には対応しないと区別されています。処理非対応地域では域外処理や一時保存があり得るため、「日本を選べる」という理由だけで国内推論の要件を満たすとは判断できません。この説明は対象のAPI・モデル等に関するもので、ChatGPTの全プランへ共通に当てはめるものではありません。
同資料では、システムデータや第三者サービスを同じ保証の対象としていません。また、米国外の利用には所定の承認と追加の契約条件が示されています。日本保存を利用したい場合でも、アカウントの適格性、対象のエンドポイント、モデルの版、契約条件を照合する必要があります。
Azureについても、保存先と処理先を区別します。Microsoftのデータ保護説明はModels sold by Azureを対象とし、GlobalやDataZoneの処理範囲を保存の説明と分けています。Globalはモデルが提供される地域、DataZoneは指定されたゾーン内で処理され得るため、日本にリソースを作ったという情報だけでは国内推論を確認できません。履歴などの状態を保持する機能や、プレビュー機能の条件も別に確認します。
さらに地域別のモデル可用性表は、Standard/Regionalの推論を配置先のリージョン内で処理するものとして説明しています。同日確認した同区分(標準/地域別)の表では、japaneastにgpt-4.1-miniの2025-04-14版と、text-embedding-3-smallのversion 1が掲載されています。前者を回答生成、後者を埋め込み生成の候補として検討できます。
ここで確認できたのは、指定した版と配置方式の地域対応です。契約、利用アカウントの制限、実際のデプロイ可否、検索サービスや監視を含む全体構成の適合までは確認していません。Global欄の同じモデル名を見てRegionalでも使えると推定せず、配置方式・地域・モデル版が交わる欄を読みます。
架空の契約を、機能ごとの採否へ落とす
以下は選定方法を示す架空例で、実在企業の契約や導入結果ではありません。日本のA社が顧客B社の設備点検報告書から、問い合わせ対応の下書きを作るとします。選定時点で有効な架空の契約付属書に、次の条件があるものとします。
- 点検報告書と、その内容を含む質問・回答は、日本国内で保存・推論する
- 検索索引、埋め込み生成、本文を含む監視ログにも同じ国内条件を適用する
- バックアップ、障害時の切替先、サポート時の本文移送も国内に限る
- 処理地域が未確認のサービスへ対象情報を送らず、例外にはB社の事前の書面承認を要する
これは説明用に置いた契約要件です。日本法が同じ条件を一律に要求するという意味ではありません。A社の担当者には承認済み資料の閲覧権限がある一方、外部サービスへの入力許可はこの選定が済むまで未確定とします。
材料は、設備ID、点検日、不具合の記述、推奨処置を含む報告書です。依頼は「前回点検の不具合と推奨処置を、根拠箇所とともに回答案へまとめる」。入力資料、利用者、回答の確認基準、契約の国内条件を固定し、候補サービスと配置方式だけを比較します。品質や速度の差を測る比較ではありません。
最初の候補AはOpenAI APIの日本保存機能です。先ほどの公式説明に照らすと、この例が求める国内推論には適合すると確認できず、その要件を満たす構成としては採用できません。学習利用を制限する設定を加えても、処理地域の条件を満たしたことにはなりません。
候補Bは、AzureのjapaneastのStandard/Regionalでgpt-4.1-miniの2025-04-14版を使い、埋め込みは同地域・同配置区分のtext-embedding-3-small version 1とする構成です。公式表を使って、この二つの候補を次の確認へ進めます。検索索引の保管先、アプリのログ、バックアップまで同じ表で確認したことにはしません。
| 確認する命題 | この段階の判定 | 判定理由と次の対応 |
|---|---|---|
| 候補Bの指定モデル版・配置区分がjapaneastの公式表にある | はい | 二つの掲載欄を確認。実アカウントで利用可能かは別途照合する |
| 候補Aの日本保存機能が国内推論条件を満たす | いいえ | 処理対応がないため、この契約対象の入力経路には採用しない |
| 候補Bの検索索引とアプリログも国内条件を満たす | 未確認 | 各サービスの契約・設定と、本文が渡る経路を確認する |
| 候補Bのバックアップと支援時の本文移送も国内に限定される | 未確認 | 公開表では決まらないため、提供者の回答と契約条件を照合する |
| Web検索先への本文送信が許可されている | 対象外 | この構成ではWeb検索を使わない。後で追加するなら再確認する |
最初の「はい」は掲載の確認であり、構成全体への入力許可ではありません。「未確認」を残したまま総合判定を合格にせず、対象の報告書はまだ送信しないという結論になります。出力する選定メモには、候補Bを確認継続、未確認の担当は情報管理と調達、次の資料は検索・監視・復旧・支援の条件、と記します。
その後、契約・設定・運用の照合がすべて揃った場合に限り、対象データを使える構成として承認へ進めます。技術的な経路点検にはまず秘密を含まない模擬資料を用い、意図しない外部接続や本文付きログの出力を調べます。本例では、その点検やAPI実行は実施していません。
満たせない機能は、何を変えるかを明示する
候補の一部が条件を満たさない場合は、モデル全体を取り替える前に、その機能が業務に必要かを確かめます。たとえば外部検索を使わず、承認した資料だけを国内で検索する構成にできれば、外部検索の経路を外せます。ただし、外部検索で最新情報を補うことはできなくなるため、必要な資料を社内で収集・更新する負担が残ります。検索に必要な埋め込みや再順位付けも、国内条件に合う方法を選びます。
監視サービスへ本文が出るなら、本文を送らない記録方式に変える案があります。この場合は、必要な監査や障害調査が成立するか、識別子から内容をたどれる情報まで対象になるかを確認します。ログを減らしたために原因を調べられなくなるなら、国内に条件の合う監視基盤を置くなど、調査手段も設計します。
外部サービスの必要機能が揃わない場合は、国内の自社管理環境でモデルを動かす構成も候補になります。ただし、モデル本体の配置だけで国内条件を満たしたとは言えません。更新取得、遠隔保守、監視、バックアップなどの接続先を含めて確認し、モデルを保守できる担当者、容量、障害時の運用を確保します。費用や品質の優位性は、配置場所だけから決められません。
公開情報だけを別の経路で処理する案も、対象情報を確実に分けられ、契約上その利用が認められる場合に限ります。顧客名を消しただけで契約の対象外と判断しないようにします。承認された代替がなければ、その機能を使わないか、人が扱う工程へ戻します。障害時に国外のモデルへ自動で切り替える設定は、国内要件の例外を事前に認めていない構成には入れません。
選定時の証拠を、運用変更まで残す
採用記録はモデル名だけで終えず、サービスと契約版、モデル版、配置方式、リージョン、機能一覧、経路図、設定の確認記録を一組にします。公式ページの確認日と、社内で設定を照合した日も分けて残します。提供者が国内対応の対象外とする機能があるなら、今回の業務で呼び出さないよう設定と運用手順へ反映します。
アプリ側の通信記録は、どの接続先へ送ったかを確かめる材料にはなりますが、提供者内部の全処理地点を証明するものではありません。逆に契約の地域条件だけでは、アプリが誤った送信先を呼ばないことまでは確認できません。契約・仕様、実設定、経路点検を組み合わせる必要があります。
モデル更新、検索機能の追加、ログ送信先の変更、非同期処理への変更、障害時切替の導入は、影響する行を再確認する契機です。再確認の担当と、未確認なら対象データの送信を止める範囲を決めておきます。採用時のモデル名に加え、現在の業務で何を使い、どのデータがどこへ渡るかを追える状態にしておきます。
国内リージョンの制約でモデルを変えるときのプロンプト互換性試験は「国内リージョン制約でモデルを変えるときのプロンプト互換性試験」、海外のAIサービスへ個人データを送る前の確認は「海外AIサービスへ個人データを送る前に、越境移転の条件を確認する」で解説しています。
