PAP-40-Layer Framework 第27層のアイキャッチ

数値・人名・法令名・日付・型番を出力直前に照合する

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数値や固有名詞を含む出力を提出する前に、誤ると相手、対象物、期限、判断根拠が変わる情報を抜き出し、原資料の該当箇所と一つずつ照合します。文章が自然であることや、同じ情報が何度も出てくることは、正しさの確認にはなりません。資料と一致する項目、不一致の項目、確認に必要な資料がない項目を分け、未確認の欄は埋めずに残します。

この作業は、数値の再計算だけでは済みません。人名の一字、型番の末尾、日付の役割、法令の正式名称は、計算が正しくても取り違えられます。出力の単語を見つけるだけでなく、「何について述べた情報か」まで原資料へ戻して確かめます。数値・単位・表の突き合わせと再計算の進め方は、数値・単位・表の食い違いを見つけて直す基本で扱っています。

目次

照合する情報を先に抜き出す

長い文章を通読するだけでは、見慣れた表記を正しいと思って読み過ごすことがあります。まず、出力中の固有情報をそのまま一覧にします。数値なら値と単位、人名なら所属や役割、日付なら何の日か、型番なら製品名や対象版、法令なら名称と条項などを一組にします。

抜き出す優先度は、表記の珍しさより、誤ったときの影響で決めます。振込額、納期、宛先、適用対象など結論を左右するものを先に確認します。一般的な氏名でも送信先を変えてしまうなら重要です。一方、文章の中に含まれる数をすべて同じ深さで調査するのではなく、判断や行動に使う情報かを見ます。

NISTの生成AI向けリスク管理プロファイルは、生成AIが誤った内容や、答えを正当化するように見える引用を示すリスクを§2.2で扱い、出力に含まれる出典・引用を確かめる対応をMEASURE 2.5の行動例に挙げています。これは特定モデルの誤り率や、以下の照合表の有効性を実測した資料ではありません。照合表は、出典の確認を個々の情報へ結び付けるための方法です。

一つの案内文を原資料へ戻す

以下は架空の機器説明会の案内を作る例です。人物、製品、資料、日程、数量はすべて説明用の仮定で、実在の開催予定や製品仕様ではありません。

原資料として、案内メモR2に次の情報があるとします。

  • 講師:営業企画部・森川彩
  • 開催日:2026年11月6日。開始時刻は調整中
  • 展示機の型番:PX-041B
  • 展示機の台数:12台
  • 適用法令:担当部署に確認中

出力された案内文が「講師は森川綾、11月6日14時開始、PX-041を12台展示します。法令に適合した機器です」なら、数値が一つ合っていても全体を合格にはできません。具体的には、次のように判定します。

確認する項目 出力の記述 照合する原資料 判定と修正
講師の氏名 森川綾 R2の講師欄:森川彩 不一致。彩へ直し、営業企画部の講師であることも照合
展示台数 12台 R2の展示機欄:12台 一致。予約数や販売数へ意味を変えず保持
開催日 11月6日 R2の開催日欄:2026年11月6日 月日は一致。年が抜けているため2026年を補う
開始時刻 14時 R2は調整中、確定資料なし 未確認。14時を外し「開始時刻は調整中」とする
展示機の型番 PX-041 R2の展示機欄:PX-041B 不一致。末尾Bまで原表記を保持
法令名・適合の根拠 法令に適合 適用法令は確認中、判断資料なし 未確認。適合の断定を外し、確認先を残す

この判定は、提示した資料との対応に関するものです。「森川彩」と原資料に書かれていることと、実際の講師がその人で確定していることは、別の確認です。案内メモが作成途中なら、最新の確定案内など追加の資料が必要になります。

開始時刻についても、原資料が14時を裏付けていないことは確認できますが、現実の開始時刻が14時ではないと証明したわけではありません。照合表では「原資料に14時の記載があるか」と「実際の開始時刻は14時か」を分けると、不一致と未確認を混ぜずに済みます。

文字列が同じでも対象と役割を確かめる

氏名は同じ表記だけで本人を特定できるとは限りません。同姓同名、所属変更、旧姓などが関係する場合は、担当の役割や利用を認められた識別情報を合わせます。本人確認のために不要な個人情報まで集めるのではなく、その業務で同一人物と判断するのに必要な範囲を定めます。

型番は末尾の文字や記号も含めて扱います。上の例ではPX-041Bが原表記で、PX-041へ短縮する根拠はありません。ただし、末尾Bが必ず改訂版を意味する、と一般化することもできません。記号の意味は対象製品の公式資料で確認します。AIが一般的な命名規則から推測した説明を、製品固有の仕様として採用しないようにします。

数値では、12台が展示予定数なのか、在庫数なのか、すでに納品した数なのかを確かめます。同じ12でも、予定を実績へ変えると別の主張です。人数・件数・金額などの単位、対象期間、税込・税抜など、意味を決める条件も原資料と一緒に残します。

日付は、作成日、更新日、開催日、期限、適用開始日を区別します。DCMI Metadata Termsでも、発行、変更、有効日・期間は別の項目として整理されています。資料が更新された日から、その内容の適用開始日を推測することはできません。案内を短くする際も、年や時刻の基準が必要なら省略しないようにします。

法令名は略称と適用判断を分けて照合する

法令に触れる文章では、正式名称、必要に応じた条項、法域、対象時点を確認します。資料が略称を使っている場合は、その略称が何を指すかを発行元の定義や公式本文と対応付けます。よく似た名称、関連する別の制度、同名の旧資料へ勝手に置き換えないようにします。

確認対象は名前だけではありません。「ある法令が存在する」「その条項にその内容がある」「この機器や業務にその規定が適用される」「この案件が適合している」は別の主張です。名称の一致だけでは、最後の適合判断まで支えられません。

架空案内の例では、適用法令自体が確認中なので、もっともらしい法令名や条文番号を足しません。表示上その説明が必要なら、「適用法令と適合の判断は担当部署へ確認中です」と示します。単なるイベント案内で法令欄が不要なら、根拠のない適合文を削り、確認事項は担当者向け記録へ分けることもできます。必要な承認や法令確認を省略したという意味にはしません。

実案件の法令や契約に関する断定は、当該公式資料と案件の条件を確認できる担当者へ引き継ぎます。この記事の照合方法だけで、個別案件の法的適合性を決めることはできません。

訂正後に残る未確認事項を見える形にする

この例の修正案は、「説明会は2026年11月6日、講師は営業企画部の森川彩です。展示機はPX-041B、台数は12台です。開始時刻は調整中です」とできます。原資料では講師と展示機が別欄にあるため、講師本人が展示作業をするとは補いません。文章をつなぐときも、原資料にない役割を加えないようにします。

未確認の情報は、何が不足しているかと確認先を添えます。「すべて未確認」と広げず、開始時刻なら確定案内、型番なら対象製品の公式資料、法令適用なら所管の担当部署、というように対象を限定します。確認できた情報も、資料名・版・箇所を残しておけば、次の改訂で再照合できます。

原資料と出力の関係を記録する背景として、W3CのPROV-DMは一次資料、派生、改訂、引用を区別しています。資料へたどれることと、その資料が最新か、記述が真実かは別なので、参照先があるだけで点検を終えないようにします。

出力直前には、訂正した氏名、日付、型番が見出し、本文、表、添付の説明で一致しているかを確認します。検索と置換を使う場合も、同じ文字列が別の人物や製品を指す箇所まで一律に変えないようにします。原資料との一対一の対応を最後まで保ち、未確認の細部が文章を整える過程で戻っていないかを見ます。

表と本文を原資料から照合する方法は「表の列・単位・数値と本文を原資料から照合する」、AIが補ったもっともらしい細部を原資料と照合する方法は「AIが補ったもっともらしい細部を原資料と照合して未確認へ戻す」で解説しています。

単位を換算するときに原値と許容差を保つ方法は「インチとミリメートルの換算で原値と許容差を保つ」で解説しています。

出典・参考資料

  1. NIST「Artificial Intelligence Risk Management Framework: Generative Artificial Intelligence Profile」(確認日:2026年10月19日)
  2. DCMI「DCMI Metadata Terms」(確認日:2026年10月19日)
  3. W3C「PROV-DM: The PROV Data Model」(確認日:2026年10月19日)
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この記事を書いた人

さかっぺのアバター さかっぺ PAP Research運営 / AIガバナンス・アーキテクト / プロンプトデザイナー

ITインフラの実務経験をもとに、AIの安全性と実用性を両立する仕組みを研究。PAP Researchでは、AIモデルの継続観測と、プロンプト・AI技術の実務解説を発信しています。

経歴や研究方法、発信方針は運営者プロフィールで紹介しています。

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